第20回日本消化器関連学会週間(JDDW2012)速報
武田薬品工業株式会社

2012年10月17日更新

多施設共同臨床試験 Japanese National CT Colonography Trial(JANCT)による大腸3D-CTの精度検証

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永田 浩一 氏
マサチューセッツ総合病院・ハーバードメディカルスクール(リサーチフェロー),大腸3次元CT研究会(代表世話人)

 近年急速に発展しているマルチディテクターCT(MDCT)の性能を活用し,大腸粘膜病変を詳細に検査できる大腸3D-CT(CT colonography;CTC)は,欧米では大規模臨床試験のエビデンスに基づきその臨床利用が広まっている。本邦における大腸がん死亡率は今なお高く,新たな大腸がん検査法の導入に期待が持たれている。

 永田氏らは,日本におけるCTCの本格的導入のためには日本独自のエビデンスを確立する必要があるとの立場から,欧米に匹敵する大規模な多施設共同臨床試験JANCTを実施し,今回,その主要成績を報告した。

多施設共同試験により日本におけるCTCの成績を報告

 CTCは,米国をはじめとする海外の臨床試験において,大腸内視鏡に迫る診断精度を有することが証明されている。一方,わが国の専門医による大腸内視鏡検査の技能は高く,その中でCTCを臨床導入するメリットを示すためには,独自のエビデンスを確立する必要があると指摘されている。JANCTはわが国の専門医による大腸内視鏡検査をゴールドスタンダードとして,CTCによる診断精度を評価することを目的として実施された。

 国内13施設およびマサチューセッツ総合病院の参加により実施され,対象は大腸内視鏡適応のある患者1,260例(女性548例,男性712例,平均年齢60.7歳)であった。CTCのために考案されたPEG-C法と呼ばれる前処置法1),2)が採用され,患者は前処置による苦痛が少なく(鎮痙剤ブスコパンは患者の99.3%で不使用),かつ,CTCに引き続いて同日の大腸内視鏡検査を実施することが可能であった。CTCは読影担当医による1次読影,および自動で病変を指摘するCAD標識下での2次読影を行い,大腸内視鏡検査における病変とマッチングを行った()。

図

 主要評価項目として「6mm以上の大腸ポリープ・大腸がんに対する患者別感度」,副次評価項目として「6mm以上の大腸ポリープ・大腸がんの検出精度(特異度,陽性適中率,陰性適中率)」が検討された。今回の試験には,放射線科医のみならず消化器科医もCTCの読影医として参加していることから,それぞれの専門医の読影成績についても比較検討された。いずれの専門医も,大腸3D-CT研究会主催による講習・読影ハンズオントレーニングを受講後,100例の読影トレーニングを完了し,一定の成績をクリアした医師が読影担当医に任命された。

欧米の臨床試験における成績と同等以上の患者別検出精度が示される

 試験の結果,CTCによる合併症の発生は1,177例中1例(0.08%)と少なく,これは炭酸ガス送気による腸管拡張時に迷走神経反射が生じた1例であった。腸管穿孔などの重篤な合併症は認められなかった。また,1,117例中わずか13例(1.1%)が不十分な腸管拡張あるいは腸管前処置により不適切な検査と判断された。

 6mm以上の大腸ポリープ・大腸がんに対する患者別検出精度は,感度87%,特異度92%,陽性適中率79%,陰性適中率95%と,欧米と同等以上の成績であることが確認された。また,10mm以上の大腸ポリープ・大腸がんに対する患者別検出精度も感度91%,特異度98%,陽性適中率89%,陰性適中率98%と良好であった。

 次に,放射線科医および消化器科医のCTC読影成績を比較した。その結果,興味深いことに,6mm以上の大腸ポリープ・大腸がんに対する患者別検出精度は,通常CT検査に従事する放射線科医に比べ,消化器科医において感度・特異度・陽性適中率が有意に良好であった(表1)。欧米では放射線科医がCTCの読影を行っているが,今回の検討から日常臨床において内視鏡検査で腸管内を観察することの多い消化器科医がCTCの読影を担当しても質が担保されるということを示唆している。ただし,10mm以上の大腸ポリープ・大腸がんに対する検出精度は放射線科医と消化器科医で差はなく,さらに読影時間については放射線科医が消化器科医に比べて有意に短かった。

表1

 永田氏は,JANCTにて示された日本におけるCTCの検出精度は,これまでの欧米の試験と比較して同等以上の成績であることを指摘した(表2)。その上で「CTCによる精検受診率および陽性適中率は高く,有用な大腸がん検査法の1つとなる可能性が示唆された」と結論した。

表2

1)永田浩一,他: 日本大腸肛門病会誌 2003; 56: 306-307
2)Nagata K, et al. Int J Colorectal Dis 2007; 22: 69-76

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